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25.7.3 【2025年最新】中小企業のアメリカ進出動向:関税リスクと販路拡大のチャンス

25.07.03

2025年、世界経済は例年以上に大きな転換期を迎えています。特に、日本の中小企業にとって注目すべきは、アメリカ市場への進出動向と新たな関税政策です。本記事では、経済産業省やJETROの最新データをもとに、製造業・小売業を中心とした中小企業のアメリカ進出動向と、トランプ政権による新関税政策の影響をわかりやすく解説します。

 

アメリカ市場進出は依然「有望」
JETROが2024年に実施した日系企業調査によれば、北米に進出する企業の66.2%が黒字見込みと、コロナ禍以前を上回る健闘ぶりを見せています。特に製造業では、現地の人手不足や物流回復を追い風に、多くの中小企業が販路拡大を進めています。事業拡大の意向を示す企業も約半数にのぼり、アメリカ市場が依然として「成長余地の大きい市場」であることを裏付けています。
ただし、アメリカ進出は依然として中小企業にとって高いハードルです。経済産業省のデータでは、海外展開を実施している中小企業は全体の2割程度にとどまります。とくに小売業では、言語・法規制・現地文化の壁が大きく、製造業に比べて進出企業数が限られています。

 

進出形態の多様化:EC・オンライン商談の台頭
進出方法にも変化が見られます。従来の「現地法人設立」「販売代理店契約」に加え、近年はECサイトやオンライン商談による間接進出が急増しています。

たとえばJETROが運営する「Japan Street」には、約9,800社の日本企業が登録しています。2025年には、5,700人超の海外バイヤーがこのプラットフォームで日本企業との商談を行っており、中小企業にとって手軽かつ低コストな販路開拓手段として注目されています。

現地に拠点を持たずとも、英語対応のECサイトや海外マーケットプレイス(例:Amazon.com、Walmart.com)を活用することで、アメリカの個人消費者に直接アプローチできる環境が整いつつあります。

 

トランプ政権の復活と“相互関税”の衝撃
しかし、2025年4月に再選を果たしたトランプ大統領が打ち出した「相互関税政策」は、アメリカ進出に大きな不安をもたらしています。

この政策では、すべての輸入品に一律10%の基本関税を課したうえで、日本からの輸入品にはさらに14%の追加関税が上乗せされ、合計24%の関税が課されることになりました。

さらに、中国やカナダ、メキシコなどにも高率の関税が課されており、国際貿易の先行きに大きな不透明感が広がっています。米国内でもインフレ懸念が高まり、FRB(連邦準備制度理事会)は利下げを見送る一方で、大統領は利下げを強く主張。金融政策の不協和音も、市場の不安定さに拍車をかけています。

 

中小企業が取るべき対応とは?
不安定な国際情勢と突発的な政策変更が続く中、アメリカ市場への進出には、”柔軟性”と“分散”がこれまで以上に求められます。以下は、特に中小企業が取るべき現実的な対応策です。

販売チャネルの「分散」:アメリカ一極依存からの脱却
今回のようなトランプ政権の関税政策のように、一国依存のビジネスモデルには大きなリスクが伴います。東南アジア、欧州、オーストラリアなど複数地域への販路確保を進めることで、政策変更や通商摩擦の影響を緩和できます。実際に、JETROの支援企業でもアメリカ市場を「主要な選択肢のひとつ」としつつ、他地域とのバランスを取る企業が増えています。

情勢に応じて「停止・縮小」しやすい体制を構築する
実店舗や現地法人による進出は、中長期的には信頼性のある手法ですが、情勢が急変した際には撤退・縮小が難しく、大きなコストを伴います。その点、ECサイトや越境ECは、販売停止・再開を比較的容易に行えるため、特に中小企業にとっては重要な選択肢です。米国市場で一時的に販売を止め、他国に切り替えるといった機動的な戦略を採ることで、リスク回避が可能になります。

現地生産やサプライチェーンの柔軟化
輸送コストや関税負担を軽減するため、アメリカ現地でのOEM委託や物流拠点の活用も選択肢の一つです。また、製造拠点を複数国に分散しておくことで、特定地域での供給停止にも対応しやすくなります。

 

まとめ
確かに2025年は、高関税・高物価・高金利と三重苦ともいえる環境ですが、アメリカの消費市場自体は依然として世界最大かつ変化に柔軟な市場です。特にサステナブル商品、健康志向の製品、ニッチな工業部品などは現地でも需要が高く、中小企業にも十分な勝機があります。
これからアメリカ市場への進出を検討されている中小企業の皆さまは、JETROや中小機構の支援を活用し、戦略的なリスクヘッジを行いながら、この有望な市場へのアプローチを適切に進めることが、チャンスを逃さず事業を拡大していく上で重要です。

 

参考文献:
経済産業省「企業活動基本調査」
経済産業省「中小企業庁白書」
JETRO「北米進出日系企業実態調査」(2023年2024年
U.S. Bureau of Economic Analysis (BEA)「New Foreign Direct Investment in the United States, 2023」
U.S. Bureau of Economic Analysis (BEA)「New Foreign Direct Investment in the United States, 2024」

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