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25.9.1 越境ECの将来性と活用方法〜北米編〜

25.09.01

東南アジア市場との違いと、遠方市場への挑戦の価値とは?

日本企業にとって国内市場の縮小は避けられず、海外市場への活路を見出す動きが加速しています。なかでも「北米市場」は、ECにおける世界最大の成長エリアであり、越境ECの戦略的展開先として注目を集めています。特に米国はEC先進国であり、Amazon・Walmart・Shopifyといった巨大なECプレイヤーが存在し、インフラや消費者行動も成熟しています。

一方で、地理的に近く文化的親和性も高い「東南アジア市場」とは異なるチャレンジもあります。本記事では、北米市場の将来性と特徴、東南アジア市場との違い、ならびに日本企業が北米へ挑戦するメリット・デメリットについて解説します。

北米市場と東南アジア市場との違い

東南アジアは急成長中で、モバイルファーストな若年層が市場を牽引しており、これから市場が成熟していくフェーズです。一方、北米は既に市場が成熟しきっており「質・ブランド・信頼性」がより重視されます。また、レビュー文化やカスタマーサービスへの期待値が高く、参入には丁寧な対応力が求められます。

 

北米越境ECの主なメリット

① 高価格帯商品でも売れやすい

北米は世界的にも先進国であり、米国・カナダともに一人あたりGDPや平均所得が非常に高いため、消費者の支払い能力が大きいのが特徴です。その結果、価格よりも「品質」や「信頼性」を重視する傾向が強く、日本製のような高品質・高価格帯の商品でも、東南アジアなど他の新興市場に比べて比較的受け入れられやすい環境があります。特に美容家電、精密機器、キッチン用品などは「Made in Japan」のブランド価値が購買決定に大きく影響します。

② 円安ドル高の今、収益性が高い

現在の為替環境(円安・ドル高)を活かすことで、日本からの輸出型ビジネスでは大きな利益を生みやすい状況です。売上がドル建てで発生し、経費が円で発生する場合、為替差益の恩恵を受けるため、越境ECの収益性は国内販売よりも高くなる可能性があります。為替リスクは存在しますが、現在の状況を追い風として活用できる点は大きなメリットです。

③ 広告効果が見込みやすい

GoogleやMetaなどの広告インフラが成熟しており、精緻なターゲティングが可能。SEO対策や動画プロモーションの成果も出やすい傾向にあります。

北米越境ECの主なデメリット

① 時差による対応の難しさ

日本と北米では13〜17時間の時差があるため、顧客対応やトラブル対応の体制整備が必須です。自動応答チャットボットや時差勤務体制が求められます。

② 配送コストと返品率の高さ

特にアメリカの消費者は「返品無料・迅速配送」に慣れており、対応できなければ機会損失にもつながります。FBA(Fulfillment by Amazon)やWFS(Walmart Fulfillment Services)など現地倉庫活用の検討が必要です。

③ 法規制や税制の複雑さ

以下の制度に留意する必要があります。

  • EC法「OECD」(安全な取引のためのガイドライン)
  • FDAルール(食品・医薬品・化粧品の販売ルール)
  • マーケティング規制(消費者を守るためのルール)
  • 関税「統一関税税率表

④ターゲティングの難しさ

アメリカやカナダは、他国よりも人種・文化が入り交じっており、広大な国土をもつ巨大な市場です。各州によって人種・文化が大きく異なるため、国だけでなく具体的なエリアやターゲットの設定が重要になってきます。現地リサーチが不十分だと、市場全体の把握は難しいでしょう。特に、文化・言語・世代ごとの傾向やトレンドをしっかり把握することが大切になります。

 

北米での販売チャネル選び

特にeBayは「中古品・レア商品」の需要が高く、日本の高品質な中古家電やホビー商品が人気です。北米では近年サステナビリティへの関心からリユース(中古品)市場が拡大しています。リユース市場を活用したい場合や、価格勝負ではない独自アイテムで勝負したい企業には魅力的なチャネルとなります。

 

まとめ:北米市場は「遠くて難しい」が「利益性が高い」

北米市場は距離・時差・文化の壁がある一方、参入障壁を乗り越えることで中長期的に安定かつ高収益が見込める有望市場です。特に日本ブランドが持つ信頼性を武器に、ECプラットフォームと物流体制を上手に活用することで大きな成果を得ることができます。

地理的・文化的に近い東南アジアと「二極展開」することも、リスク分散と成長戦略の観点から有効な選択肢と言えます。

越境ECをお考えの場合、ぜひお気軽にご相談ください。貴社の商材の場合、どのエリア・どのプラットフォームが最適かアドバイスさせていただきます。

 

参考文献

1* U.S. Census Bureau – Quarterly Retail E-Commerce Sales Report

2* The Straits Times Southeast Asia e-commerce sales projected to more than double by 2030: report

3* Amazon seller central

4* Walmart Marketplace

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