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25.8.4 美容機器のタイ輸出で注意すべき「医療機器法」と規制の壁
25.08.04美容・医療機器メーカーにとって、東南アジア市場は魅力的な成長エリアです。中でもタイは、美容医療の需要が高く、輸出先として有望な国のひとつです。しかし、日本で「美容機器」として扱われる製品も、タイでは「医療機器」として厳しく規制される場合があることをご存じでしょうか。本記事では、タイへの美容機器輸出を検討する企業が押さえておくべき、法規制や輸出手続きのポイントを解説します。
タイの美容機器=医療機器?日本との認識ギャップに注意
タイでは、2019年に改正された「医療機器法」によって、医療機器の輸入・流通・販売が厳格に規制されています。ここで重要なのは、日本では「美容目的の機器」として扱われているレーザー機器や高周波(RF)機器なども、タイでは医療機器として分類されるケースが多いという点です。
医療機器法第4条では、医療機器を「人または動物の診断・治療・予防、身体の矯正や生命維持などを目的とするもの」と定義しています。*1 これにより、美容機器であっても身体にエネルギーを加える機器や、皮膚・体内への侵襲がある機器は、医療機器としての手続きを求められるのです。クラス分類と登録手続き:どの機器がどの分類?
タイの医療機器は、リスクベースで4つのクラスに分類されています。
クラス1:低リスク(例:外用の非侵襲的製品)
クラス2〜4:中〜高リスク(エネルギー照射機器、埋め込み型、長期使用など)*1美容機器の多くは、クラス2以上に分類され、特にエネルギー出力が高い製品はクラス3〜4として審査対象になります。
登録に必要な手続きと期間
輸入手続きはタイ側のインポーター(輸入業者)が行い、タイFDA(食品医薬品局)にて登録が必要です。登録には以下のステップが含まれます:輸入事業所の登録:審査料や登録証発行料などを含め、12営業日程度。
機器の登録手続き:
クラス1:届出制、約200日、手数料約3,100バーツ
クラス2・3:詳細な技術文書(CSDT)提出、約250日、約49,000バーツ
クラス4:審査がより厳格、約300日、約74,000バーツCSDT(Common Submission Dossier Template)はASEAN域内共通フォーマットで、使用目的、安全性、設計データ、ISO13485認証などの詳細が求められます。 *1
日本の輸出者が準備すべき書類
日本側では以下のような書類をタイの輸入者に提供する必要があります:
ISO 13485認証書
自由販売証明書(または日本での製造販売承認証)
製品仕様書、適合宣言書、安全性証明
ラベルおよびパッケージ情報(タイ語または英語表記)これらはすべて、CSDT形式で整理されていなければなりません。
インポーターの選定:コストと責任のバランスがカギ
タイでは、インポーター(輸入業者)がタイFDAとの全てのやり取りを行い、輸入品の責任を負います。医療機器の輸入で重要なのは、医師などの責任者を立てられるかどうか。それによりインポーターに必要な輸入ライセンス取得の可否や、申請のスムーズさが左右されます。
海外営業を行い販路先候補が見つかったとしても、その販路先自体がインポーターとして対応できるかどうかは販路先によるため、様々な選択肢を予め知っておくことが重要です。選択肢としては:
現地販売先が輸入ライセンスを取得しインポーターとなり、FDA登録・販売責任を担う(コスト抑制)
第3者専門機関に輸入業務を委託し、販売先と責任を分離する(コスト高)
自社にとってどちらが現実的か、費用対効果を冷静に見極めることが求められます。まとめ
タイ市場での美容機器販売は大きな可能性を秘めていますが、医療機器としての扱いを前提に慎重な準備が不可欠です。法制度の理解、登録に必要な書類や期間、信頼できるインポーターの確保など、進出前にやるべきことは多岐にわたります。
しかし各規制や条件としっかり向き合い対応していくことで市場参入することは可能です。
本格的な海外展開を進める前に、弊社にご相談いただくことで、専門機関や現地コンサルタントと連携し、リスクの少ない形でビジネス展開できる選択肢をご提示することが可能です。
お気軽にご相談ください。参考文献
*1 ジェトロ|タイにおける医療機器の輸入制度https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2022/8b5fbe81cd77af92/iryoukiki_thai_202203.pdf