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24.9.12 海外進出を成功させる所得分類の理解
24.09.12海外進出を検討する際、進出先の国の経済状況や発展段階を的確に理解することで、リスクを軽減し、成長可能性を最大限に活かすことができます。進出先選びの指標の一つとして、世界銀行の所得分類*1 は非常に有効です。この指標は1人あたり国民総所得(GNI)を基に、客観的に各国を4つに分類しています。
この記事では、各所得分類の特徴を多角的に解説し、海外進出の決断にどう活用できるかを考察します。
低所得国:挑戦的な市場と長期的な成長ポテンシャル
経済環境
低所得国は、発展途上であるため市場の規模が小さく、インフラや法制度が未整備な場合が多いです。このため、進出するには高いリスクを伴います。しかし、同時に急成長の余地が大きく、未開拓の市場であることから、先行者利益を得るチャンスも存在します。労働力とコスト
低所得国の魅力の一つは、低コストの労働力です。製造業や組み立て業など、人件費が大きな割合を占めるビジネスにおいては、進出することでコスト削減が見込めます。ただし、労働者のスキルレベルや教育水準が低い場合が多く、人材育成に時間と資金をかける必要があります。政治的・社会的リスク
低所得国にはしばしば政治的な不安定さや法制度の未整備が存在します。これにより、予測不可能なリスクが増えますが、近年ではアフリカ諸国など一部の低所得国で、政治的安定化の進展やインフラ投資の増加が見られます。これらの国々は将来的に大きな成長ポテンシャルを持つため、慎重かつ長期的な視点で進出を検討する価値があります。低中所得国:安定したコストメリットと成長余地
経済発展
低中所得国は、低所得国から一定の経済成長を遂げた国々が該当します。経済は発展段階にあり、市場規模は拡大しつつあります。これにより、日本の中小企業にとっては進出のリスクが相対的に低くなりつつも、成長の余地が依然として大きい点が魅力です。コストと効率
低中所得国では、労働コストは依然として先進国に比べて低い一方で、インフラや教育水準が低所得国よりも整備されています。このため、製造業やアウトソーシングビジネスにとって、安価で質の良い労働力を活用しやすい環境が整っています。例としては、ベトナムやフィリピンが挙げられ、製造やBPO拠点としての需要が増加しています。市場の成長性
消費者層の成長も著しく、購買力が徐々に上昇している点が注目されます。特に新興中間層が増加しており、消費市場としての魅力が高まっています。例えば、インドやベトナムでは、所得向上に伴い、消費財市場が急成長しています。中長期で見て、非常に有望な市場と言えるでしょう。高中所得国:成熟市場と新たな成長機会
経済環境と競争力
高中所得国は、経済がさらに成長し、国際的な競争力を高めている国々です。これらの国々では、インフラや産業基盤がかなり整備され、中小企業にとって進出しやすい環境が整っています。しかし、市場の成熟に伴い、競争が激化している点には注意が必要です。成熟市場と消費者
一方で、購買力の高い消費者層が存在し、質の高い商品やサービスへの需要が高まっています。2020年にインドネシアの格付けが「低中所得国」から「高中所得国」に引き上げられましたが、この格付けステータスでは安価な労働力という見方から購買力のある消費市場と捉えることができるフェーズといえます。法制度の透明性とビジネスの安定性
高中所得国では、法制度やビジネス環境が整備されているため、進出後のリスク管理がしやすいです。例えば、税制や企業運営に関するルールが明確で、外資企業の参入も比較的容易です。中小企業にとって、安定したビジネスを展開するには、進出の候補として有力です。高所得国:成熟市場での高度な競争と差別化戦略
市場の規模と競争
高所得国は、最も経済力が高く、購買力の高い市場です。特にアメリカ、ヨーロッパ、日本のような国々は、大規模で成熟した市場を持ち、消費者の購買力も極めて高いです。しかし、同時に競争が非常に激しく、既存の大手企業との戦いが避けられません。このため、差別化戦略やブランド力が進出の鍵を握ります。価格競争力とブランド価値
高所得国では、価格競争よりも品質やブランド力が重視される傾向があります。進出する際には、他社との差別化を明確にし、高品質な商品やサービスを提供することが重要です。また、消費者の関心が環境問題やサステナビリティに向けられているため、これらの要素をビジネス戦略に組み込むことで競争力を高めることができます。インフラと法制度の安定性
高所得国では、インフラや法制度が非常に整備されており、ビジネスの運営が安定しています。ビジネスに対する規制が厳しい反面、透明性が高く、予測可能な運営が可能です。これにより、中長期的な事業展開を見据えた進出に適しています。まとめ
海外進出を考える際、世界銀行の所得分類は、ターゲット国の経済状況や市場の成長ポテンシャルを評価する上で重要な指標の一つといえます。低所得国は長期的な成長が期待される未開拓市場、低中・高中所得国は安価な労働力や成長余地がある成長市場、高所得国は成熟した消費市場として、各分類に応じた戦略が求められます。企業のビジネスモデルやリスク許容度に応じて、最適な進出先を選定し、成功を収めるための第一歩を踏み出しましょう。参考文献
*1 The World by Income and Region https://datatopics.worldbank.org/world-development-indicators/the-world-by-income-and-region.html?_gl=1*71oleh*_gcl_au*MTkyMjI4NjA2NC4xNzI0NzQxNTU5