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23.12.1 東京のホテル代高騰から読み解く日本の今後
23.12.012023年9月の日経新聞によると、都内の高価格帯ホテルの平均宿泊料金(ADR)は、コロナ前の2019年と比べて約3割上昇しており、上昇率では米ニューヨークを上回っています。また、高価格帯ホテル以外でも都内のホテル料金の高騰に気づいた方もいらっしゃるのではないでしょうか。東京のホテル代が高騰している理由は多岐にわたりますが、主な要因は2つあると考えています。今回はホテル代の高騰という事実・宿泊業の現状を通して日本の今後について考えたいと思います。
1.コロナで萎んだ市場・コロナ明けの需要急増で顕著な人材不足
2019年までは訪日外国人観光客の増加や東京2020オリンピックの開催予定により、ホテル業界は全体的に好調な状況でした。しかし、2020年からは新型コロナウイルス感染症の影響で旅行需要が激減しました。株式会社帝国データバンクの「『旅館・ホテル業界』 動向調査(2022年度)」によると、市場規模はピーク時の2018年度の約5.2兆円に比べ、約2.8兆円にまで落ち込みました。また、ホテルや旅館などの宿泊業の倒産件数も前年に比べて顕著に増大しました。株式会社東京商工リサーチの調査によると、2020年度の宿泊業倒産数は118件で、2013年以来7年ぶりに100件を超える高水準でした。このように2020年のホテル業界は、非常に厳しい状況だったと総括できます。
引き続き現状の回復ペースが続けば、23年度の旅館・ホテル市場はコロナ禍前並みの4〜5兆円前後に到達する可能性がありますが、コロナ禍で市場が萎んでいたホテル業界から他業種に移った人材の戻りは鈍く需要に対応できていません。足元では人手不足で予約の制限や客室稼働の抑制を行い、更には人材確保のための賃金アップのために、宿泊費の高単価化に舵を取るケースが多くなっています。参照元:株式会社帝国データバンク 「『旅館・ホテル業界』 動向調査(2022年度)」https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p230702.pdf
参照元:株式会社東京商工リサーチhttps://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1191098_1527.html
2.ターゲット層を”料金に寛容なインバウンド・富裕層”に
2022年後半から為替状況が円安に傾いており、外国人にとって日本の物価は相対的に安くなっています。ホテル側は値上げしても予約してもらえる料金に寛容なインバウンドに照準を当てています。インバウンド向けの価格編成を行ったと考えられます。
新型コロナウイルス感染症の「5類」移行と前後して、日本政府は約3年にも渡る入国制限(水際対策)を解除しました。すでに先だって2022年10月にも入国制限の大幅緩和が行われましたが、2023年4月からは入国に際してワクチン接種証明書などの書類提出も不要になりました。
この入国制限の撤廃により、外国人旅行者が日本へ訪問しやすくなるため、インバウンド需要がますます増加する見込みです。
国内ホテル大手は海外から訪日する富裕層を取り込むために相次いで高級ホテルの新規開業を予定しています。ヒューリックは30年ごろまでに1泊10万〜30万円の高級旅館「ふふ」を銀座などに17軒開業します。現在の約2倍です。パレスホテルも運営ホテル数を30年までに現在の2.5倍となる10施設とするほか、帝国ホテルも26年春に京都で新規開業し、30年代には東京の本館を建て替えます。高価格帯ホテルの開業が続きそうです。宿泊業だけではない、今後の日本
人材不足は宿泊業だけに限らず高齢化や人口減少の影響を受け既にじわじわと広がっています。人材不足の行く末を先んじて示しているのが今の宿泊業といえます。またエネルギー価格、各種物価も高騰している日本は大幅な賃金アップも期待できない状況のため、日本人の消費活動が活発になることは考えにくいでしょう。現在宿泊業界で起きている「国を問わず経済力があるお客様を取り込むことに舵をきる」ケースは他の業界でも必要な考え方です。全業界において人材不足・各種物価の高騰を打開するには、いかに高単価化できるかが重要になってきます。
現地の日本人が東京のホテルは高くて泊まれない、とならないように海外市場をうまく活用し日本人全体が潤っていくことを目指していきたいですね。